トリトン流体力学 第二版（上）

訳者序文より

本書は、D.J.トリトン著の Physical Fluid Dynamics second edition の全訳である。本書の最大の特徴はこの書名からもわかるように、流体力学を「物理的な」視点から解説したところにある。

本書の翻訳を思い立ったのは、以下の３つの理由からである。

第一に、本書は通常の流体力学の本とはかなり異なったアプローチをとっていて、またそれが見事に成功しているからである。世の中に流体力学の本はあふれているが、類書はほとんどないと思われる。

第二に、自分自身がもし流体力学の本を書けといわれても、このようなアプローチでは絶対に書くことができないからである。原著者の深い物理的な洞察に感心せざるを得ない。

第三に、取り上げられた題材が、他の流体力学の本では詳しく取り扱われないものが多く含まれているからである。特に熱対流、成層流体や回転流体、不安定性などが非常に詳しくまた物理的に明快に著されている点も本書の魅力であると思われる。

目次

1. 序
   1. はじめに
   2. 本書の範囲
   3. 記法と定義
2. 管内流れと溝内流れ
   1. はじめに
   2. 層流理論: 溝内流れ
   3. 層流理論:管内流れ
   4. レイノルズ数
   5. 助走長さ
   6. 乱流遷移
   7. 流量と圧力勾配の関係
3. 円柱まわりの流れ
   1. はじめに
   2. レイノルズ数
   3. 流れのパターン
   4. 抵抗
4. 平行壁内での自由対流
   1. はじめに
   2. レイリー数とプラントル数
   3. 鉛直な隙間内の対流
   4. 水平層内の対流
   5. 表面張力の変動による対流
5. 運動方程式
   1. はじめに
   2. 流体粒子と連続体力学
   3. オイラー座標とラグランジュ座標
   4. 連続の方程式
   5. 実質微分（ラグランジュ微分）
   6. ナビエ・ストークス方程式
   7. 境界条件
   8. 非圧縮性の条件
6. 高度な基礎概念
   1. 流線，流管，パーティクルパス，流脈
   2. 円柱まわりの流れに対する比較
   3. 流れ関数
   4. 渦度
   5. 循環
   6. 渦度方程式
7. 力学的相似性
   1. はじめに
   2. 力学的相似性の条件:レイノルズ数
   3. 従属量
   4. 他の支配無次元パラメータ
8. 低レイノルズ数と高レイノルズ数
   1. レイノルズ数の物理的な重要性
   2. 低レイノルズ数
   3. 高レイノルズ数流れ
9. 粘性流れの方程式のいくつかの解
   1. はじめに
   2. ポアズイユ流れ
   3. 回転クウェット流
   4. 球のまわりのストークス流
   5. 円柱まわりの低レイノルズ数流れ
10. 非粘性流れ
    1. はじめに
    2. ケルビンの循環定理
    3. 非回転運動
    4. ベルヌーイの方程式
    5. 非粘性流中の抵抗（ダランベールのパラドックス）
    6. ベルヌーイの方程式の応用
    7. いくつかの定義
11. 境界層，後流，噴流
    1. 高レイノルズ数流れにおける粘性領域
    2. 境界層近似
    3. 境界層の分類
    4. 圧力勾配がない場合の解
    5. 後流
    6. 噴流
    7. 粘性流中の運動量とエネルギー
12. 剥離と付着
    1. 剥離現象
    2. 剥離の条件
    3. 低レイノルズ数の剥離
    4. 境界層剥離
    5. 高レイノルズ数流れに置かれたにぶい物体と流線形物体
    6. 付着と再付着
13. 揚力
    1. はじめに
    2. 2次元翼
    3. 3次元翼
    4. 回転物体
14. 対流
    1. はじめに
    2. 対流の方程式
    3. 濃度変化による流れ
    4. 強制対流
    5. 自由対流：基礎概念
    6. 断熱温度勾配
    7. 熱機関としての自由対流
    8. 自由対流：境界層型流れ
15. 成層流
    1. 基礎概念
    2. ブロッキング
    3. 風下波
    4. 内部波
16. 回転流体中の流れ
    1. はじめに
    2. 遠心力とコリオリ力
    3. 地衡流とテイラー・プラウドマンの定理
    4. テイラー柱
    5. エクマン層
    6. 固有安定性と慣性波
    7. ロスビー波
    8. 回転と成層
    9. 回転同心円筒内の対流

1. 表記法
2. 図書目録と参考文献