児童福祉の課題
定価 | ¥3,080(税込) |
ページ数 | 198 |
サイズ | A5 |
著者 | 京極 高宣(日本社会事業大学学長) |
発売 | インデックス出版 |
ISBN | 4-901092-29-4 |
ISBN (電子書籍) | 978-4-910058-60-3 |
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はしがき より
我が国の社会福祉は、いわゆる社会福祉基礎構造改革を中心に20世紀末から21世紀初めにかけて大転換を遂げようとしている。しかしながら、古川孝順教授など(古川孝順『児童福祉改革』誠信書房1991年など参照)が指摘しているように、児童福祉改革に関しては遅々とした歩みで、戦後初期に確立された「パラダイム」(児童相談所を実施機関とした児童養護の措置制度等)は、依然として変革されていない。もちろん、部分的には数多くの改善がされ、例えば保育行政では契約型施設への移行など目まぐるしい変革がなされたことは否定できない。それでも児童養護施設は都道府県主義で、児童相談所などの措置機関による体系などは全く変更されずにいる。
さて意外に知られていないことだが、私は、日本社会事業大学へ教員として赴任した当初の研究テーマ(教育テーマではない)が、母子福祉論であった。それ以来、児童福祉には関心があるものの、人口高齢化の進展で、高齢者福祉の研究など、それも在宅ケアの研究に関心が移っていった。そこで、保育所改革論を除くと、児童福祉に関しては論議する機会がきわめて少なくなった。しかし、冒頭で触れたように、個人的偏見を許していただければ児童福祉制度は最も改革の遅れている分野だけに、私個人としては改めて挑戦してみたいと思ってきたのである。
本書は、従来から書きためた児童福祉の諸論稿を大きく5部に編成した。すなわち新たな二十一世紀型社会保障の展望から論じた社会保障と子育て支援の関係の論文を第1部とし、その後の保育所改革の原案となった保育所の在り方に関する論稿を第2部とし、地域福祉と福祉教育の関連分野についての小さな論評を第4部とし、執筆当時はそれなりに注目されたイギリスのワンペアレント・ファミリー関連の論文を第5部とした。それに、今回改めて書き下した児童養護施設論を第3部とし、その間に差し挟み、合計で5部編成とした。
内容的には、書いた時期も四半世紀のタイム・ラグがあって新旧色々で、専門性からも精粗様々で恥ずかしい限りであるが、私なりの人権尊重と地方分権化を理念とした福祉改革の視点は児童福祉の分野においても意外にも我ながら首尾一貫したところがあるので、この際、二十一世紀の児童福祉を展望する専門書として刊行することにした次第である。私はご案内のように児童養護論の専門家ではなく、特に第3部については推敲が足りないところも多数あり、反論も予想されることは十分に承知している。しかし、加賀美尤祥先生などのご指導をふまえ、全社協児童福祉部の高橋良太氏の協力を得た上での二十一世紀にふさわしい児童福祉改革への問題提起として受けとめていただきたいと思ってあえて世に問うた。
本書を、日本社会事業大学で長年にわたり児童福祉分野でご指導いただいた白梅学園短期大学学長の石井哲夫先生、同窓会名誉会長の五味百合子先生、鷲谷善教先生、小川政亮先生の日本社会事業大学四名誉教授に献げることをお許しいただければ、幸いである。
目次紹介
- 子育て支援への社会保障
- 社会保障改革と将来の子育て支援
- 児童手当と児童年金
- 保育所の在り方
- 乳幼児の養育状況と母親の保育意識
- 福祉改革と公立保育所の役割
- 地域に開かれた保育所を目指して「総合的子育てセンター構想」
- 保育所の今後-保育改革議論-
- 保育所財源の在り方
- 児童養護施設の在り方
- 児童養護施設の系譜
- 児童養護施設の課題と方向
- 児童福祉施設の体系について
- 地域福祉と福祉教育
- 地域福祉とネットワーキング
- 学童・生徒ボランティアの意義と歩み
- ひとり親家庭への支援
- イギリスにおけるワンペアレント・ファミリー研究の動向
- イギリスの母子福祉施策とファイナー報告
- イギリスにおける「未婚の母」の生活実態
- ワンペアレント・ファミリー自助団体の国際比較について