メルビン・ケイの実用水理学超入門

カバー
定価 ¥4,950(税込)
ページ数372
サイズB5
著者Melvyn Kay
荻原 国宏【訳者】
発売山海堂
ISBN4-381-01690-4
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訳者序文より

この本に出会ったのは5年前の1999年,IAHR(国際水理学会)の2年に一回開催される会議がオーストリアのGraz(グラッツ)で開かれたときである.本会議の展示場に並べられた本の中からみつけた一冊であった.

当時この本を見たときに,水理学の教科書としてこのレベルでよいのだろうかと感じた.しかしその後2年たたないうちに大学での水理学の学習について行けない学生が多くなり,10年前に行った学習範囲の半分程度しか進行できない状況が出てきた.その大きな原因は,数式がたくさん出てくる水理学の内容にとてもついて行けないということであった.さらに微分,積分を使う数式での展開がために水理学の内容を理解しようとしない学生まで出てくる事態となった.数学を使わない授業をしようと,自分で教科書を書こうかと考えたときに,思い出したのがこの本であった.

著者のMelvyn Kay氏とのメールの交換で,「日本でも数学離れが起こっているのですか?」との問いがあり,イギリスではかなり前からあったことも知った.

水理学の数学を使った展開は非常に美しいが,数学の苦手な学生には現象を理解するための障害になっている.そこで現象の理解のための最小限の数式を使って水理学を理解するのに,この本は最適だと思う.数値を使った解説を例題で説明する工夫がされており,実際に起こる現象を最低限の数式で説明する努力もされている.

例えば静水圧での平面に作用する合力とその作用点を求める問題にしても,断面2次モーメントの式を出さないで最も単純な式の結果のみを提示して済ませ,それ以上の高度なことを勉強したい人は,もっと高度な本で学習するような展開をしている.また開水路の水面高が,常流の場合には水路底を上げることにより低下する事実を比エネルギーの原理を使って丁寧に説明している.

この本で水理学の基本を理解することが出来れば,より高度な展開については別の教科書,例えば本間仁著「標準水理学」などで学習すればよいであろう.

この本が大学での水理学の学習に困難を持っている学生,社会人で水理学の現象を改めて理解したい人の役に立てば幸いである.

目次

  1. いくつかの基本的な項目
    1. はじめに
    2. 単位
    3. 速度と加速度
    4. 摩擦力
    5. ニュートンの運動法則
    6. 質量と重さ
    7. スカラー量とベクトル量
    8. ベクトルでの扱い
    9. 仕事,エネルギーとパワー
    10. 運動量
    11. 水の性質
  2. 静水力学-静止した状態の水
    1. はじめに
    2. 圧力
    3. 圧力と水深
    4. 圧力ヘッド
    5. 大気圧
    6. 圧力の測定
    7. ダムの設計
    8. 水門に作用する力
    9. アルキメデスの原理
    10. 理解度を試す問題
  3. 流体力学-水が流れている場合
    1. はじめに
    2. 理論の展開
    3. 水理学の道具箱
    4. 流量とその連続性
    5. エネルギー
    6. エネルギーとその連続の使用
    7. いくつかのエネルギーの応用
    8. 運動量
    9. 実在流体
    10. 抗力
    11. 渦の剥離
    12. ボールを曲げる
    13. 理解度を試す問題
  4. パイプ(管路)
    1. はじめに
    2. 典型的なパイプ流れの問題
    3. パイプ摩擦の公式
    4. λ物語
    5. 動水勾配
    6. 管の継手部分でのエネルギー損失
    7. サイフォン
    8. 実際問題でのパイプの選定
    9. パイプ内の流量の測定
    10. パイプの運動量
    11. ウォーターハンマー
    12. サージ
    13. 理解度を試す問題
  5. 開水路
    1. はじめに
    2. パイプ(管路)か開水路か?
    3. 層流と乱流
    4. 水理のツールの使用
    5. 均一な流れ(等流)
    6. 徐々に変化する流れ
    7. 急変する流れ
    8. 二次流
    9. 沈殿物の輸送
    10. 理解度を試す問題
    1. はじめに
    2. 波についての表現
    3. 海上の波
    4. 川と開水路の中の波
    5. 洪水波
    6. 特別な若干の波
    7. 潮汐発電
  6. 開水路の水理構造物
    1. はじめに
    2. オリフィス構造
    3. 堰とフルーム
    4. 刃型堰
    5. 広頂堰
    6. フルーム
    7. 流量測定
    8. 流量の制御
    9. 水位の制御
    10. エネルギーの減勢
    11. サイフォン
    12. カルバート
    13. 理解度を試す問題
  7. ポンプと水車
    1. はじめに
    2. ポジティブな置換ポンプ
    3. 回転運動ポンプ
    4. 吸入
    5. 配水
    6. ポンプの揚程
    7. ポンプ・パフォーマンス
    8. ポンプを選ぶこと
    9. パイプラインにポンプを適合すること
    10. 直列に連結されたポンプと並列なポンプ
    11. ポンプの運転
    12. 動力装置
    13. ポンプ揚水で起こるサージ
    14. タービン
    15. 空洞現象(キャビテーション)
    16. 理解度を試す問題
  1. 付録
    1. 理解度を試す問題の答
    2. 参考文献と更に勉強するための図書目録