考え方がよくわかる設計実務(3) 耐震設計の基本

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定価 ¥4,400(税込)
ページ数286
サイズA5 上製
著者大成建設株式会社土木本部土木設計部
発売インデックス出版
ISBN978-4-901092-56-2
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耐震設計の意義より抜粋

耐震設計は,常時と対比した地震時という1つの荷重状態に対しての設計である.構造物にとってどちらが厳しい状態であるかは,本来検討を実施して初めてわかる.しかし,日本は非常に地震が多い国であり,地震時によって(地震力によって)構造物の構造諸元が決まることが多いのも事実である.

地震被害を受けるたびに,耐震設計の方法および地震力が改訂され,日本の社会資本は,地震にとって安全であるという認識をもつまでに至った.

そのときである.1995年に兵庫県南部地震が発生した.その被害の甚大さは,土木技術者がそれまでもっていた安全神話をものの見事に吹き飛ばした.耐震設計において,この地震は一大転機となったともいえる.

耐震設計にあたって重要なことは,構造物および地震力の作用の特性を勘案して,どのようにして構造物の耐震性を確保するか,という計画をまず考えることである.たとえば,基礎地盤を地盤改良したほうがよい場合もあるだろうし,逆に構造物の耐力を増して抵抗させたほうがよい場合もある.また,基礎構造と地上部分の強さのバランスなどにも注意を払う必要がある.さらに,大規模な地震を考えた場合,構造体としての粘り強さを増すことで対応するなどの方策も考えられる.

つまり費用対効果を考えて方策を立案し,最適な設計を行うことが重要である.

目次

第1章 耐震設計の概要

  1. 耐震設計の意義
  2. 耐震設計の流れ
    1. 設計フローと解説
    2. 耐震性能と地震力の設定の概要
    3. 地盤応答の把握についての概要
    4. 構造物への地震入力と解析についての概要
    5. 構造物の健全性照査についての概要
    6. 地盤の液状化,地盤流動に対する影響の評価
  3. 構造物別の考えるポイント
    1. 基礎構造物
    2. 地中構造物

第2章 ものの揺れ方

  1. 1質点系の調和加振
  2. 1質点系の地動加振
  3. 応答スペクトルの利用
  4. 多質点系の振動

第3章 耐震性能と地震力の設定

  1. 地震力の設定
  2. 耐震性能の設定

第4章 地盤応答の把握

  1. 簡易設定法
    1. 地盤の設計水平震度の簡易設定法
    2. 地盤の応答変位
  2. 等価線形解析法
    1. 解析方法について
    2. 2E法とE+F法
    3. 入力地震動波形の設定方法
    4. G/G0~γ,h~γ曲線の設定
    5. 計算結果の解釈と利用法
  3. 逐次非線形解析法
    1. 解析方法について
    2. 地盤の非線形履歴モデル
    3. 設計用地震動の入力方法
    4. 計算結果の解釈と利用法
  4. 有効応力解析
    1. 有効応力解析とは
    2. 解析方法について
    3. 計算結果の解釈と利用法

第5章 構造物への地震入力と解析

  1. 震度法
    1. 解析法について
    2. 設計水平震度
  2. 多質点系モデルの解析法
    1. 解析法について
    2. 構造物の固有周期と設計水平震度
  3. 地震時保有水平耐力法
    1. 解析法について
    2. 地震時保有水平耐力法に用いる設計水平震度
    3. 地震時保有水平耐力
  4. 応答変位法
    1. 解析法について
    2. 地盤ばね定数
    3. 部材非線形定義(M-φ曲線,地盤ばね)
  5. 応答震度法
    1. 解析法について
  6. 構造物の動的解析法
    1. 解析法について
    2. 非線形材料モデル

第6章 構造物の健全性照査

  1. 許容応力度法による照査
  2. 限界状態設計法による照査
    1. 終局限界による照査
    2. 構造物全体の変形性能照査

第7章 地盤の液状化

  1. 液状化に対する設計の考え方
  2. 液状化の予測と判定法
    1. 道路橋示方書による液状化判定法
    2. NCEERによる液状化判定法
    3. 詳細判定法
  3. 液状化を防止する対策とその設計法
    1. 液状化を防止する方法
    2. 密度増大工法の設計
    3. 液状化対策範囲の設定について
  4. 液状化の発生を許容する対策とその設計法
    1. 液状化の発生を許容して構造物で対応する方法
    2. 地中構造物の浮き上がりの対策とその設計法
    3. 液状化による圧密沈下を許す対策とその設計法
  5. 地盤流動の予測法
    1. 簡便法による予測
    2. 剛性低下法による予測

第8章 構造物別の耐震設計例

  1. 直接基礎の例
    1. 設計条件
    2. 地盤反力の検討
    3. フーチングの断面算定
  2. 杭基礎の例
    1. 設計条件
    2. 杭の押込み支持力の上限値
    3. 杭の引抜き支持力の上限値
    4. 地盤の液状化判定
    5. 地震慣性力にかかわる基礎の耐震性能評価
  3. シールドトンネル(応答変位法-縦断 正弦波による検討
    1. トンネル諸元と地盤条件
    2. 地盤の応答変位
    3. 地震時断面力の算定
    4. セグメント諸元と等価剛性
    5. 断面力算定結果
  4. シールドトンネル(応答変位法-縦断 地盤を忠実にモデル化した検討)
    1. トンネル諸元と地盤条件
    2. 地盤の動的解析
    3. シールドの解析

第9章 液状化する地盤における設計例

  1. 液状化判定計算例
  2. 液状化に伴う地盤流動の対策
    1. 検討モデルと地盤条件
    2. 検討方法
    3. 対策前の地盤流動量算定結果
    4. 流動化対策と対策後の流動量算定結果
  3. 上部層を改良し下部層を改良しない対策
    1. 地盤条件
    2. 液状化対策方針
    3. 液状化後の沈下計算