有限要素解析プログラム CRISP計算例
まえがきより
有限要素圧密解析の初心者が,複雑・不均質な自然地盤への対応に苦慮し,弾塑性構成式の有用性を十分に理解出来ず実務に利用する場合,精緻な構成式もその実力を十分に発揮できない。また,販売・利用されている有限要素圧密解析プログラムの計算結果は必ずしも実際の軟弱地盤の挙動と一致しない。(社)地盤工学会のFEMの設計への適用に関する研究委員会報告では,軟弱地盤地盤上の道路盛土に関する研究者の沈下量予測おいて,実際とは,かなり異なる現状である。計算結果の違いは構成式によるのか,FEプログラムによるのか明らかでない。実務に利用する場合,一定・共通条件下で計算したら,どのプログラムでも同じ計算結果を得られる必要がある。購入したプログラムのソースコードが公開・解説されていない限り,計算結果に疑問を感じても入力データミスを再検討するしか術がない。
著者の一人は,ケンブリッジ大学のBrittoらの開発した有限要素圧密解析プログラム“CRISP”を卒研生や院生に利用させてきた。しかし,学生たちの評価は“入出力が不便で使いにくい”であった。しかし、Brittoらの本には全ソースコードの解説されており,FEMとカムクレイという古典的弾塑性粘土モデルの批判的学習は,学生に役立つと考えていた。また,実務家にとって施主が精緻な構成式によるFE解析を期待していない場合,CRISPのようなプログラムにも,まだ活躍の場はあると考え,弾塑性FE解析初心者に対する学習資料として計算例を取りまとめた。問題によってはFEMでなく,差分法などの簡単な数値計算でも十分と考えられる場合があるので,Excel VBAによる計算結果との比較も示した。しかし,CRISPには,利用上,著者らが理解・納得できない点もある。本書の不明点や誤りをご指摘・連絡いただければ,著者らで今後も継続検討し,利用例のデータファイルを充実させていく予定である。古いCRISPは利用しにくいという意見を考慮し,入力データとその作成法を計算例のデータファイルとともに著者の一人(向後隆道)のHPからダウンロード可能とした。弾塑性構成式と有限要素解析プログラムの利用上の注意点や問題点の理解に本書が少しでも役立てば幸いである。
ダウンロードサイトはあとがきに記載されています。
目次
1. 弾塑性応力ひずみ関係
- 降伏関数F と塑性ポテンシャルQ
- 弾塑性応力ひずみマトリックス
- 三軸供試体の弾塑性応力ひずみ関係
- 弾塑性モデルと静止土圧係数K0値
- 粘塑性流動則とK0圧縮
2.一次元排水圧縮試験
- 土質定数の設定
- 弾性土の計算例
- 弾塑性土(カムクレイ)の計算例
- CamBiot3D.fの計算例
- Excel VBA“CDHK0.xlsm”の計算例
3.三軸圧縮試験
- 三軸圧縮試験の要素図
- K0圧縮応力増分によるひずみ増分
- 応力制御で軸応力のみ増加の三軸圧縮CD試験
- 三軸圧縮CU 試験と非排水経路
4.圧密試験
- 圧密度と時間係数
- 一次元圧密と等方圧密
- CRISPの土質定数
- 弾塑性及び弾粘塑性有限要素一次元圧密解析
- バーチカルドレーンの圧密
- 三軸供試体の異方圧密
5.平面ひずみ圧縮圧密問題
- 排水圧縮と掘削
- 平面ひずみ圧密解析
- 超軟弱地盤における道路盛土試験工事の事例解析
6.クイックサンドの計算
- 一次元浸透水圧による有効応力変化
- 二次元(平面ひずみ)浸透水圧による有効応力変化
7.孔内載荷試験の圧密効果
- 調査試験結果と土質定数
- 孔内載荷試験と計算結果の比較
参考文献 附録~ CRISP の入力データ作成支援~
あとがき