コンパクトシリーズ流れ 流体シミュレーションのヒント集

カバー
定価 ¥1,650(税込)
ページ数103
サイズA5
著者河村 哲也
発売インデックス出版
ISBN978-4-910058-11-5
ISBN (電子書籍)978-4-910058-24-5
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(電子書籍)
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試し読みは「電子書籍版」です。電子書籍版は、本文内の図やイラストがカラー表記されています。そのためシミュレーションの結果などが、印刷版(白黒印刷)に比べて見やすくなっています。

序文より抜粋

気体と液体は,どちらも固体のように決まった形をもたず,自由に変形し,どのような形の容器でも満たすことができるといったように性質が似ているため,まとめて流体とよんでいます.流体の運動など力学的な性質を調べる分野が流体力学であり,われわれは空気や水といった流体に取り囲まれて生活しているため,実用的にも非常に重要です.

流体力学はいわば古典物理学に分類され,基礎になる法則は単純で質量保存,運動量保存,エネルギー保存の各法則です.これらを数式を使って表現したものが基礎方程式ですが,流体が自由に変形するという性質をもつため非線形の偏微分方程式になります.その結果,数学的な取扱いは著しく困難になります.一方,現実に流体は運動していますので,解はあるはずで,実用的な重要性から,近似的にでもよいので解を求める努力がなされてきました.

特に1960 年代にコンピュータが実用化され,それ以降,流体の基礎方程式をコンピュータを使って数値的に解くという,数値流体力学の分野が急速に発展してきました.そして,現在の流体力学の主流は数値流体力学といえます.さらに,数値流体力学の成果を使って流体解析を行えるソフトウェアも,高価なものからフリーのものまで多く存在します.ただし,そういったソフトウェアを用いる場合,理屈や中身を理解しているのといないのでは大違いであり,単純に出力された結果を鵜呑みにすると大きな間違いをしてしまうといった危険性もあります.

このようなことからも数値流体力学の書籍は多く出版されていますが,分厚いものが多く初歩の段階では敷居が高いのも確かです.そこで,本シリーズの目的は数値流体力学およびその基礎である流体力学を簡潔に紹介し,その内容を理解していただくとともに,簡単なプログラムを自力で組めるようにいていただくことにあります.

本書は,走行中の電車内のウィルスの拡散のシミュレーションなど興味ある(あるいは役立つ)流体シミュレーションの例をおさめています.読みやすさを考慮して,各巻とも80~90 ページ程度に抑えてあります.またページ数の関係で本に含めることができなかったいくつかのプログラムについてはインデックス出版のホームページからダウンロードできるようにしています.なお,別冊「流れの話」では流体力学のごく初歩的な解説,コーシーの定理など複素関数論と流体力学の関係,著者と数値流体力学のかかわりなどを記しています.

本シリーズによって読者の皆様が,流体力学の基礎を理解し,数値流体力学を使って流体解析ができることの一助になることを願ってやみません.

目次

Part I シミュレーションの方法

Chapter 1 音波の計算

  1. 基礎方程式と高精度差分法
  2. 無反射境界条件
  3. 計算例

Chapter 2 細長い領域内の流れ

  1. 直線に近い細長い領域
  2. 大きな曲率をもった細長い領域

Chapter 3 重合格子

  1. 重合格子の問題点
  2. 効率のよい計算法と計算例

Chapter 4 回転物体まわりの流れ

  1. 回転座標系における基礎方程式
  2. 回転体まわりの流れ

Chapter 5 密度成層流

  1. 安定成層流
  2. 密度成層流の基礎方程式

Part II シミュレーションの例

Chapter 6 走行中の電車内のウィルスの拡散

  1. モデル化・格子生成
  2. 計算方法
  3. 計算パターン
  4. 計算結果と考察
  5. まとめ

Chapter 7 地面効果翼機周りの流れの解析

  1. 地面効果翼機について
  2. 数値シミュレーションのための計算方法
  3. 境界条件と計算パラメータ
  4. 結果と考察
  5. まとめ

Chapter 8 複数のサボニウス風車まわりの流れ

  1. サボニウス型回転装置
  2. サボニウス型回転装置に対する格子
  3. 複数台のサボニウス風車まわりの流れ

Chapter 9 山越え気流による雲の生成

  1. 雲の表現
  2. フルード数と気温減率の関係
  3. 数値解法
  4. 計算結果

Appendix A リーマン面における仮想的な流れ

Appendix B 超立体まわりの流れ