流れのシミュレーションの応用!
前書きより
本書はコンピュータ環境科学ライブラリの1冊として,前著「流れのシミュレーションの基礎!」の続編として著したもので,内容も前著を発展させたものになっている.すなわち,前著では流れのシミュレーションのあらすじを理解することを目的として基礎的な内容に終始したが,それはいきなり本格的な本を読むと,実用上もっとも重要な内容に到達する前に挫折してしまうことが多々あると考えたからである.しかし,本格的な流れのシミュレーションを行うためには,前著の内容だけでは不十分であるため,本書では前著の簡単なまとめを含みながら,前著で書き残した部分を補う形にした.具体的な内容は以下のとおりである.
1章では流れの基礎方程式を保存則から導いている.これらは一般の流体力学の教科書にも記されている内容であるが,それらの本は特に数値計算を意識して書かれたものではないため,強調すべき点が異なっている.そこで,ここでは数値計算への応用を念頭において書くことにした.2章では線形偏微分方程式の差分解法について記述しているが,前著の復習を兼ねながら内容を発展させている.たとえば,前著では差分近似式をなかば天下り的に与えたが,ここでは組織立った導き方を示している.3章も同様で,前著では非圧縮性流体の方程式の代表的な数値解法しか述べなかったが,ここでは多くの解法を系統立てて述べている.4章では実際のシミュレーション例を示しているが,多くの例をあげるより少数の例を詳しく解説した方がわかりやすく実際の役にも立つと思われるため,3つの例に絞った.付録では工学的なシミュレーションの例として鉛直軸型風車まわりの流れをとりあげ,プログラムを中心に解説した.
目次
- 基礎方程式
- 保存法則と基礎方程式
- 連続の方程式
- 運動方程式
- エネルギー方程式
- ラグランジュ微分
- ナビエ・ストークス方程式
- 温度の方程式と無次元化
- 境界条件
- 数値解法
- 差分方程式の構成法
- 線形偏微分方程式の差分解法1
- 線形偏微分方程式の差分解法2
- 非圧縮性ナビエ・ストークス方程式の数値解法
- 非圧縮性ナビエ・ストークス方程式の解法1
- 非圧縮性ナビエ・ストークス方程式の解法2
- MAC法
- MAC法の変形
- 非圧縮性ナビエ・ストークス方程式の解法3
- 格子系
- 数値シミュレーションの実例
- 閉空間内の音波の伝播
- ジャイロ回転するナックルボールの数値解析
- 山越え気流による雲の発生
- 付録
- サボニウス風車まわりの流れ
- プログラム