最新 時空間情報学

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定価 ¥3,300(税込)
ページ数232
サイズA5
著者今井 博/近藤高弘
発売インデックス出版
ISBN978-4-901092-90-6
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はじめに より

狭い意味での測量技術は,測量機器の高度化と高精度化がなされ,したがって,日々,測量される膨大なデータは,リアルタイムで,しかも,大量に生成され,蓄積されている.また,視野を広げ,人工的に生成される地表属性データや地下探査データ,それに加えて,情報が文字通り,自分の周辺空間を飛び交う,大量情報時代となってきた.そこで,我々自身が作り上げた情報データを含めて,情報の正誤を把握しつつ,如何にその情報に振り回されず,効率よく利用していくかが現代社会で重要となってきた.

このように,空間情報(spatial data)と呼ばれる情報は,GlobalであったりLocalであったりで,宇宙空間,空中,地表および地下の,地理的・地形的かつその属性を持ち,人間との関わり合いにおいて,重要な基礎解析が可能なデータ群の総称と言える.時には,静的なデータであったり,また,時には,時間経過に伴い大きく変化する動的な4次元データであったりする.後者は,その変化速度が光の速度に近い現象であれば,アインシュタインの相対性原理の考慮が必要になるかも知れない.

本書では,アインシュタインの相対性原理を考慮せずに扱える,静的,あるいは,準静的な時間変化をもつ,宇宙空間からの情報データ,空中での情報データ,地表での情報データ,地下空間からの情報データなどの空間情報を対象に,取得の原理,処理やその結果の可視化方法など,最新技術を含め,その種類や解析方法・利用例等などを概論的に紹介する.

このような広範囲の内容を全てにわたり詳しく解説するのは,著者らには無理がある.したがって,その概論の具体的な内容は,過去に出版されている書籍からの情報,インターネットからの公開情報,様々な学会論文からの情報,直接専門家に対するヒアリングからの情報,などが本書の大きな部分を占めることになる.そして,現代の技術を鑑みて,現在,得られる新しい情報を,ページの許す限り網羅する.

本書の目的は,現代の急速なコンピューター技術革新のなかで,時空間情報がどんな場面でどのように得られ,どのように利用されているか,将来を担う学生や社会人などの読者のための入門編として役立ててもらうことであり,自分がこれから進もうとしている専門分野で,確実に出会うであろう内容であると確信している.そして,研究に行き詰ったとき,あるいは,トラブルを解決しなければならないとき,本書の内容の全部または一部が,その解決にヒントを与えることができれば幸いである.

目次

第1章 時空間情報学

  1. 時空間情報学
    1. 時空間情報学とは
    2. 準光速変化対応とは
  2. 時空間情報学のすすめ
    1. 時空間情報学の背景
    2. 時空間情報学の位置付け
    3. 時空間情報を支える先端技術
    4. 時空間情報関連の機関
  3. 時空間情報学の応用分野

第2章 基礎数学

  1. 一般
    1. 公理
    2. 0割の禁止
  2. 線形代数学
    1. ベクトル
    2. 行列・行列式
    3. ベクトルの演算
    4. ベクトルと幾何
    5. ベクトルや行列で微分
  3. 統計学の利用
    1. 平均
    2. データ分布
    3. 偏差
    4. 最小二乗法
      1. 回帰直線
      2. 回帰平面
      3. 正規方程式
    5. 内挿・外挿
      1. 線形内挿
      2. 双一次内挿
      3. 双三次内挿
  4. 空間の微分
    1. ベクトルの発散
    2. ベクトルの回転
  5. 波動方程式
    1. 基礎
    2. 弾性波・超音波
    3. 電磁波
  6. テイラー展開とマクローリン展開

第3章 測量機器起源の空間情報

  1. トータルステーション
    1. 測量機器
    2. トータルステーション
    3. 後方交会法
    4. 測量機器の応用
      1. 自動追尾式トータルステーションを用いたワンマン測量への応用
      2. 自動追尾式トータルステーションを用いた変状計測への応用
      3. GNSS測量機器を用いた情報化施工への応用
  2. 写真測量
    1. 写真測量とは
    2. 立体撮影と共面条件
    3. 写真の解析
    4. A8法による相互標定
    5. 写真測量の標定の手順
    6. 写真測量の応用例
  3. 慣性測量
    1. 慣性測量(慣性航法)とは
    2. 慣性センサーの種類
    3. 慣性航法の原理
    4. 慣性測量
    5. 慣性航法の応用

第4章 人工衛星起源の空間情報

  1. 衛星測位技術
    1. 衛星測位の革新
    2. 測位の流れ
    3. 測位衛星の種類
    4. 静止衛星の種類
      1. 静止衛星の軌道
      2. 気象衛星 ひまわり
      3. 放送衛星BS,通信衛星CS
    5. その他の衛星
    6. GNSS信号概要
      1. GNSS信号
      2. GNSS時間と受信機時間
    7. 測位法/前方交会法・後方交会法
    8. 従来のGNSS測位法
      1. 単独測位
      2. 相対測位 DGNSS測位法
      3. 相対測位 干渉測位法
      4. 整数値バイアス
    9. 新しいGNSS測位法
      1. VRS-GNSS方式
      2. FKP-GNSS方式
    10. 測地系
      1. 水準点
      2. 経度・緯度原点
    11. 地球の形・重力
    12. 万有引力と重力
    13. 標高,ジオイド,GNSS高
    14. GNSSの応用
      1. カーナビ
      2. MTSAT
      3. 無人化施工
  2. リモート・センシング
    1. リモート・センシングとは
    2. リモート・センシングの種類
    3. 使用される電波と波長
    4. センサーの種類
    5. 可視センサーによる環境計測
    6. 熱赤外センサーによる温度環境計測
    7. 画像データの処理
      1. 衛星画像データと補正
      2. 補正方法
      3. カラー合成
      4. 空間フィルター
      5. 平滑化フィルター
      6. 特徴抽出と分類
      7. 分類
      8. 最尤法の概念
      9. クラスター分類の概念
      10. その他 恒星の計測(分光特性)
         

第5章 データベース起源の空間情報

  1. GIS
    1. GISとは
    2. GISの定義と基礎
  2. GISのデータ表示
    1. GISのデータ形態
    2. GISのデータ表示
  3. ベクターモデルの幾何学と位相構造
    1. 位相構造/トポロジー
    2. GIS の位相データの表示方法
    3. 図形要素間の位相関係
    4. ベクターモデルデータの空間分析
    5. ベクターモデルデータのオーバーレイ
      1. 点と線のOL
      2. 点と面のOL
      3. 線と面のOL
      4. 面と面のOL
  4. ラスターモデルの幾何学と位相構造
    1. 位相構造/トポロジー
    2. ポリゴンのオーバーレイの概念
    3. ラスターモデルデータのオーバーレイ
  5. データベース
    1. データベースの管理
    2. データベースの種類
  6. 地図メッシュコード
    1. 第1次地域区画
    2. 第2次地域区画
    3. 第3次地域区画
    4. 正規座標系
  7. GISの利用
    1. 利用分野
    2. GIS導入計画
    3. GIS利用形態
    4. GIS利用例

第6章 探査技術起源の空間情報

  1. 探査技術
    1. 探査技術について
    2. 受動的探査とは
    3. 能動的探査とは
  2. 受働的探査
    1. 信号計測-地震計測
    2. 信号計測-気圧計測
    3. 信号計測-潮位計測
    4. 信号計測-重力計測
    5. 信号計測-磁力計測
    6. 状態計測-変位計測
    7. 状態計測-傾斜計測
    8. 状態計測-温度・湿度計測
  3. 能動的探査
    1. 振動計測-超音波探査
      1. 音波の性質
      2. 振動モード
      3. 音波の速度
      4. 音波の周波数とエネルギーおよび指向性
      5. 音波の・反射・回折
      6. 振動波の発生方法
      7. 振動波の主な利用
      8. 音響トモグラフィへの応用
      9. 三次元位置検出の応用
      10. 基盤層判定への応用
    2. 振動計測-弾性波探査
      1. 弾性波探査とは,
      2. 弾性波探査の基礎
      3. 弾性波周波数分析
      4. 弾性波反射面における反射と透過
      5. 弾性波の振動形態
      6. 弾性波速度
      7. 弾性波探査の反射法,屈折法,透過法
    3. 信号計測-電磁波探査
      1. 電磁波探査とは
      2. 電磁波探査の原理
      3. データの表示と実際
      4. レーダー探査状況の例
    4. 信号計測-電気探査
      1. 電気探査とは
      2. 比抵抗の意味
      3. 比抵抗と測定
      4. その他の電気探査法
    5. 信号計測-磁気探査
      1. 磁気探査とは
      2. 原理
      3. 金属探知機
      4. 水平磁気探査
      5. 垂直磁気探査
    6. 信号計測-電磁探査
      1. 電磁探査とは
      2. 電磁誘導
      3. 原理と探査の手順
    7. 信号計測-画像探査
      1. 熱映像
      2. 写真画像
      3. 強制熱映像
    8. 信号計測-光探査
      1. 光距離測定
      2. 光ファイバー・センシング

第7章 可視化技術

  1. DTM/TIN
    1. 表示方法の種類
    2. DTM
      1. DTMとは
      2. DTMの種類
    3. DEM
      1. DEMとは
      2. DEMの種類
  2. 疑似立体技術
    1. 立体画像の意味
    2. 立体視
    3. 2次元立体図
    4. オルソ画像の作成
  3. 見える化技術
    1. 光を用いた可視化
    2. 測定技術と可視化
      1. 科学的なデータ表示
      2. 電磁レーダー探査の結果表示
  4. VR/AR関連技術
    1. VRやARの意味
    2. VRとは
    3. ARとは
    4. テレイグジスタンス
    5. 利用例
      1. CAVE
      2. MIRPOS
  5. IDタグ/エアタグ
    1. IDタグの種類
    2. バーコード
    3. RFIDタグ
    4. RFIDタグの身近な応用例
      1. イモビライザー
      2. FeliCa
      3. RFIDタグ骨材ストック管理システム

第8章 地球科学

  1. 地球科学
    1. 地球科学とは
    2. 地球空間を調べる
    3. 地球空間のダイナミクス
    4. ホットスポット
    5. 海洋底
    6. 全地球的エネルギーバランス
    7. 地球の内部構造
    8. 地震波の地球内部伝播の特徴
      1. 地球内部を伝播した波の表記方法
      2. シャドウゾーン
    9. 地殻のテクトニクス
      1. 海嶺・海膨
      2. 海溝・海盆
  2. 地震
    1. 地震発生のモデル
    2. 震源と震央
    3. 地震の規模と揺れ
    4. マグニチュードとエネルギー
    5. 地震予知
      1. 地震予知とは
      2. 気象庁の地震予知
      3. 地震エコーによる観測
  3. 火山
    1. 活火山
    2. 火山フロント
    3. 火山の噴火活動
      1. 噴火形態
      2. 火砕流
      3. 火砕サージ
      4. 溶岩ドーム
    4. 火山性地震
      1. A型地震
      2. B型地震
      3. 爆発地震
      4. 火山性微動(脈動)
    5. 火山噴火予知
    6. 時間間隔解析
    7. 理学と工学